SparseTaro (スパースタロー)は、神経科学分野の研究におけるコネクトーム解析を目的とした、スパース構造推定技術を用いた可視化ソフトウェアです。
脳科学分野では、高等哺乳類が持つ複雑な脳神経回路網の全体像を解明する研究が盛んに行われています。その中で、コネクトーム解析は、様々な実験手法で得た大規模な実験データをもとに、個々の神経細胞やその機能的集合体がどのように結合しているかを推定し、神経回路網の回路図を解き明かすものです。
神経回路網の推定手法には、従来多変量解析による相関分析がよく用いられてきました。神経細胞の信号間の相関係数を求めることで、神経回路の接続の有無を推定します。しかし、相関分析では、疑似相関と呼ばれるニセの相関が含まれるので正確な推定が行えない問題があり、コネクトーム解析を行う現場では、常々研究者の頭を悩ませる問題となっていました。 この問題を解決する手法として疑似相関を排除した偏相関を求める偏相関分析に期待が寄せられていますが、これまでと同じ偏相関分析では計算コストが高くなるため、大量のデータを扱うコネクトーム解析には不向きであることから、従来の分析手法を採用せざるを得ないという現状があります。
弊社は、ビッグデータやIoTに関する研究開発業務を通じて、スパース構造推定技術の最新の研究成果をもとに、従来の偏相関分析と比べて 30 倍~ 1000 倍高速なアルゴリズムをソフトウェアとして実装しました。これにより、神経科学分野のコネクトーム解析において実用可能な偏相関分析を提供するスパース構造推定ソフトウェア「SparseTaro (スパースタロー)」の製品化を実現し、このたび発売することとなりました。
神経信号を何らかの実験手法を用いて同時に記録したデータをもとに、
個々の神経細胞の神経信号間の相関関係を求め、機能的な神経結合状態を可視化します。
脳神経回路網は個々の神経細胞が軸索と呼ばれる線維を伸ばして他の神経細胞と結合を行い形成されています (図.1 参照)。例えば神経細胞Aが刺激を受けて興奮すると神経信号を発生します。発生した神経信号が接続先の細胞BとCに伝播し、機能的に強い結合がある場合は、細胞BとCも興奮して神経信号を発生します。 このような神経信号を何らかの実験手法を用いて同時に記録し、得られた個々の神経細胞のデータの相関関係を解析することによって、相関行列と呼ばれる相関関係の強弱を示す行列が得られます。SparseTaroはこの相関行列を相関関係の強弱に対応した疑似カラーで可視化表示します(図.2 参照)。 縦軸と横軸には解析対象の神経細胞が対応付けられており、例えば、赤に近い色を持つ細胞ペアは相関関係が強いことを示し、機能的に強い神経結合を形成していると読み取ることができます。つまり、研究者はこの疑似カラー表示された相関行列に基づいて研究対象の神経細胞がどのような神経結合を行っているかを解析し、図3に示すような神経回路図を得ることができます。
価格:アカデミック版 (神経科学分野向け)
900,000円 (税抜)
Graphical Lasso 法は、標本共分散行列に基づいて、偏相関行列のスパース推定を行います。標本データ数よりも変数数が多い場合、標本共分散行列は退化しますが、この手法では逆行列を計算せずに偏相関行列を推定することができます。この手法は、L1-調整付き負値対数尤度最小化問題の双対問題である矩形制約付き logdet 最大化問題をブロック座標上昇法によって解きますが、そのときのサブ問題である矩形制約付き二次計画問題の双対問題を L1-調整付き二次計画問題として解くことで、高速な計算を実現しています。
参考文献
DP-GLASSO 法 (Dual-Primal Graphical Lasso) は、標本共分散行列に基づいて、偏相関行列のスパース推定を行います。標本データ数よりも変数数が多い場合、標本共分散行列は退化しますが、この手法では逆行列を計算せずに偏相関行列を推定することができます。この手法は、L1-調整付き負値対数尤度最小化問題をブロック 座標降下法によって解きますが、そのときのサブ問題である L1-調整付き二次計画問題の双対問題を矩形制約付き二次計画問題として解くことで Graphical Lasso 法よりも精度が高くロバストな推定を行います。
参考文献
OS | Windows 7 / 8.1 / 10 64ビット |
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CPU | 1.6 GHz 以上 |
メモリ | 4 GB 以上 |
HDD | 100 MB 以上 |
入力ファイル形式 | CSV 形式 |
出力ファイル形式 | CSV 形式、PNG 形式、AVI 形式 |
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